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花袋のアンナ・マール

田山花袋と言えば「蒲団」や「田舎教師」で有名な明治の小説家です。
花袋の文体は明快で分かりやすく、明治の大文豪の作品よりかなり読み易い方だと思います。紀行文なども書き、人気があったそうですよ。

さて、彼が一世を風靡した小説「蒲団」は、粗筋をご存知の方も多いことでしょうが、こんな感じ。


 妻子ある中年の小説家が、彼を崇拝する小説家志望の女学生を弟子にして同居を始めたところ、若い彼女の色香に迷い始める。
 ある日彼女には大学生の恋人がいて、既に一線を超えていることを知った小説家は、嫉妬と肉欲の懊悩に苦しみ、ついに彼女を親元に返し、そして彼女の使っていた蒲団と夜具にくるまって、彼女の残り香を嗅ぎながらさめざめと涙する。


なんか、情けない感じですか?
この情けなさを、隠さずリアルに書くのが、花袋の「自然主義」なんですね。
実はこの女学生にはモデルがいまして、花袋は「東京の三十年」の中で、彼女の事を「私のアンナ・マアル」(アンナ・マール)と呼んでいます。

「蒲団」が「新小説」という雑誌に掲載された後、そのアンナ・マアルから花袋宛に手紙が届きました。


 やがて山の中のアンナ・マアルから悲しむような泣きたいような腹立たしいような手紙が来た。
 私は重々すまないやうな気がして、侘びを言ふやうな手紙を書いた。


しかし、このアンナ・マアル、恋人と文学を諦めきれなかったらしく、またすぐ田舎から上京し、度々花袋の元を訪れ、恋人と結婚したり別れたり、雑誌記者になったりと、自由で新しい明治の女性を生きました。

彼女の名前は岡田美知代と言います。
あんな私小説を発表されても、再び花袋に会いに行くとは、なかなか腹が据わった女性ですね。

また「アンナ・マアル」とは、ゲアハルト・ハウプトマン作「寂しき人々」に出てくる女学生の名前で、やはり既婚の小説家が彼女に岡惚れするお話です。
「少女病」という作品を書いた花袋は、若い女性に永遠の幻想と憧れを、魁偉な巨体に秘めていたようです。

花袋の「東京の三十年」は、変動する明治という時代と、文学界の裏話などが生き生きと描かれていて大変興味深い内容です。
親しかった、国木田独歩や柳田国男、島崎藤村、その他、大文豪の裏話もちらほら知ることが出来て面白い。

初版が出たのは大正6年、その後創元社が昭和二十二年に正宗白鳥の後書きを入れて発行。これはいくらか古書で出る事もありますが、岩波から文庫が発売されています。息の長いベストセラーなのかもしれません。








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