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淑女的浪漫風

淑女のあれこれ

カテゴリー「文学」の記事一覧

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文豪大活躍の「帝都物語」

最近、また大地震の予言がチラホラしだして、ちょっと不安。地震兵器なんて信じていないのですが、ふと思いだした映画があります。
この映画というか原作がきっかけで、日本に風水ブームが起こったと言われる「帝都物語」です。

言わずと知れた荒俣宏さんの出世作ですね。
映画化された「帝都物語」は明治の終わりから大正の関東大震災あたりまでを舞台にした物語で、今見ると色々粗も目立つし、物語の展開が唐突で???と思う部分もあるのですが、ビデオではないフィルムの空気感が時代背景にマッチしてきれいです。


さて、この作品には明治の文豪が登場人物として現れ、それが時代のリアル感を醸し出しています。こういう設定も、当時は新しかったですね。

その文豪の中でも、かなり重要な役を引き受けているのが、幸田露伴です。

幸田露伴
幸田露伴:高橋幸治さん


実際に写真で見る幸田露伴は、坊主刈りでツルッとしたお顔ですが、この露伴は長髪で、怪人加藤と闘うなかなかの武闘派です。
どうして露伴が選ばれたのかなぁと思っていたのですが、この方は中國の怪異譚を翻訳したり、かなり道教の研究などしておられたようなので、荒俣先生はそこに目を付けたのでしょう。

そして、相方として控えるのが森医師こと森鴎外です。
何だかホームズとワトソンみたい。

森鴎外
森鴎外:中村嘉葎雄さん


森鴎外というと、軍服着てビシッとポーズを決めているおでこの広い人というイメージなのですが、こちらは渋いですね。



そして物理学者でありながら文才にも恵まれた寺田寅彦。あの夏目漱石とも親しかったそうですよ。

寺田寅彦
寺田寅彦:寺泉憲さん


明らかに役者さんの方がイケメンなんですが、彼も作品の中では大活躍します。
個人的にはいとうせいこうさんの飼い犬に、食事を分けてあげているシーンが好きです。


そして、最初と最後に印象的に現れるタロット占い師の泉鏡花。美味いところをさらって行きます。

泉鏡花
泉鏡花:坂東玉三郎さん


「玉さま」と呼ばれて婦女子がキャーキャー言ってた頃ですね。
泉鏡花もちょっと品の良い感じなので、いいキャスティングかも。


この映画を久しぶりに見たら、日本の結界とかが気になってきました。
日本の都市の様相もかなり変わったことですし、本物の風水師さんに、調べていただきたいものです。

このままずっと、将門公は眠っておられるのでしょうか?と。



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芥川賞を取らなかった名作たち

先日、2011年度下半期の芥川龍之介賞が発表されましたね。

この賞、もともとは純文学の新人作家による中短編から選考されるという性格のものでしたが、今はとても新人とは言えない中堅作家のものも含め、幅広く選ばれているようです。
作家の年齢も10代から60代まで網羅していますので、芥川賞は若い作家のものということはありません。

私は一時、50代で芥川賞を取った米谷ふみ子さんの作品を良く読みました。
作風というよりは、アメリカで絵を学ぼうと留学した女性がユダヤ系の脚本家と結婚し、二人の息子さんに恵まれるも下の子が自閉症児で、日常的に起こる様々なトラブルに打ちのめされながらも逞しく生き抜く、という内容に興味を持ったからです。

賞を取った作品は「過ぎ越しの祭」というタイトルで、作者の私小説と言っていいかと思います。
過越しの祭 (岩波現代文庫―文芸)

ちなみに、米谷さんのユダヤ系アメリカ人の夫は、ジョシュ・グリーンフェルドさんという方で、往年の名画「ハリーとトント」の脚本を手がけた方です。
ハリーとトント [DVD]

芥川賞を取ったあとも、彼女は精力的に本を出されましたが、この賞を取れば作家として将来安泰かというとそうではありませんし、また取らなかったから作家として劣っているということもありません。

「芥川賞を取らなかった名作たち」という本がありますが、巻末に第一回から第139回(平成20年上半期)までの、芥川賞候補作の一覧が載っていて、これがなかなか面白いんですよ。
既に有名人気作家なのに、候補にしか上がらなかった方や、受賞しているのに、これはどなた?という、あまりメジャーとは言えなくなってしまった方も。

昭和50年代後半、何度も候補に上がりながらも受賞に至らないまま自死された、函館出身の佐藤泰志さんの名前もあります。
彼の作品は、一昨年有志により「海炭市叙景」として映画化されました。
それをきっかけに、氏の絶版になっていた作品が次々と刊行されています。
ご家族も嬉しいことでしょう。
海炭市叙景 (小学館文庫)

純文学は売れないと言われますが、それでも百年連綿と読み継がれるのは、純文学ではないかと思います。見返りの少なさに絶望し、筆を折る方も多いと思いますが、良い作品はどこかで誰かが支持してくれるのではないでしょうか。
経済的な見返りについては、何とも言えませんが……。







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有島武郎のファム・ファタール

札幌には「芸術の森」という公共の施設が有り、ここの広い敷地には幾つかの美術館や工房などが建てられ、広い自然公園内を散策しながら色々なアートを楽しめる良いところです。

そしてこの敷地内には、北海道とゆかりのある作家、有島武郎の邸宅が移築、復元されています。大正時代にデザインされた木造二階建ての建物は、とても瀟洒で意外と中が広く、一時は北大の寮に使われていたのも納得の造りです。

旧有島邸


ちょっと冬は寒そうですけどね。
建物の中には、有島武郎が、綺麗な奥様や可愛い三人の子供たちと撮った写真なども飾られいています。

さて、この有島武郎が若い既婚の女性編集者と不倫の果てに、三人の男の子を残して情死したことは有名なお話。
有島武郎は、奥様が三人の子供たちを残して亡くなられた後、けっこうあちこちに愛人を作っていたようなので「或る女」に出てくる、彼自身をモデルにしたと言われる誠実で真っ直ぐなクリスチャンの青年と、その実像はだいぶ違うようです。

心中については、Wikiや実弟里見弴の「安城家の兄弟」で詳しく知る事が出来ると思いますので、ここでは書きませんが、代わりに同時代を生きた文豪、永井荷風の日記「断腸亭日乗」から、この心中事件についての興味深い一文を引いてみます。


大正十二年八月朔。
夜帝国劇場に徃く。狂言は河合井伊一座の壮士芝居なり。暑気甚しければ廊下にて涼を納め狂言は見ず。
長崎小山内の両氏と弥生に飲む。新橋の妓じつ子とかいへるもの、過日有島武郎と情死せし秋子の夫に同情し、近日結婚する由。
妓輩の談によれば、じつ子は先年英国皇族来朝の際、その枕席に侍し莫大の金を獲たり。之を持参金となし秋子の良人と結婚せば必世に名を知らるべしとて、名を売りたき一心にて結婚を思立ちしなりとぞ。
果して然らば当世の人情ほど奇々怪々なるはなし。


なるほど、確かに人の欲と愛憎は奇々怪々。


後年、有島武郎の代表作の一つ「或る女」は映画化されますが、これは国木田独歩の最初の妻をモデルにした小説です。
彼女は自分の欲望を満たす為なら、他人を踏みつけにしても構わない淫婦として描かれています。(あくまでモデルですが)

面白いのがこの映画のキャストで、主役の今日マチ子に惚れ込み、妻子を捨てる船乗りの役を、有島武郎の長男、森雅之が演じていること。
また、熱烈な恋愛結婚の果てに妻に去られたヒロインの前夫を、やはり自死した文豪芥川龍之介の遺児、芥川比呂志が演じていることも、何だか因縁深いと言うか、意図的なキャスティングに思えます。

この映画のメデイアが、探しても見つからないのが残念ですが、「浮雲」で、森雅之の渋い男前が見られますよ。


 





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幻想の鏡花

今日の午後、テレビで泉鏡花の舞台「天守物語」が放映されていました。
もともと鏡花が、演じてくれるものなら只で書いても良いと言って手がけた戯曲だそうです。
テレビで見る舞台なので、少しスケールが小さくなってしまいましたが、綺麗な作品でした。

ただ、鏡花の幻想をビジュアル化するなら、視覚効果をもっとテクニカルに表現できる映画やドラマにした方が、もっといいかもしれないと思いました。

さて、この泉鏡花は、金色夜叉で有名な尾崎紅葉の門下で、書生として働きながら作品を書いていたそうです。
尾崎家の玄関を入るとすぐ側の二畳の部屋が、彼の仕事場兼書斎。勿論一人の部屋ではありません。他にも小説家志望の若者が二三人。

彼の絢爛な江戸趣味と華麗流麗な文体は、幻想怪奇な物語とともに、短編の名手として名声を博しました。ただ今読むと、文体が古風で流麗過ぎて、情景がよく解らないことも…。

「潦」って何と読むか分かりますか?「にわたずみ」って読むんです。
いちいち辞書を引かないと、意味も分かりません(笑)

自然主義の作家の中には「~空想ででっち上げ」と揶揄することもあったようですが、幻想怪奇好きな柳田国男などは高く評価していたようです。

また、鏡花は藤村の詩的な小説などはあまり好きではなかったみたい。
鏡花の作品は、どうしても怪奇な物語が有名ですが、人情話のような品の良い切ない小品も残しています。

かく言う私は、鏡花の美しい創造世界はとても好きなのですが、やはり時々、状況や風景が理解しきれず、頭を悩ましてしまいます。

そんなに中途半端な理解しか出来なくても、次の作品を読んでみようと思わせるのは、やはり時代を超えて魅力的な鏡花の文体と幻想の世界なのだと思います。






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花袋のアンナ・マール

田山花袋と言えば「蒲団」や「田舎教師」で有名な明治の小説家です。
花袋の文体は明快で分かりやすく、明治の大文豪の作品よりかなり読み易い方だと思います。紀行文なども書き、人気があったそうですよ。

さて、彼が一世を風靡した小説「蒲団」は、粗筋をご存知の方も多いことでしょうが、こんな感じ。


 妻子ある中年の小説家が、彼を崇拝する小説家志望の女学生を弟子にして同居を始めたところ、若い彼女の色香に迷い始める。
 ある日彼女には大学生の恋人がいて、既に一線を超えていることを知った小説家は、嫉妬と肉欲の懊悩に苦しみ、ついに彼女を親元に返し、そして彼女の使っていた蒲団と夜具にくるまって、彼女の残り香を嗅ぎながらさめざめと涙する。


なんか、情けない感じですか?
この情けなさを、隠さずリアルに書くのが、花袋の「自然主義」なんですね。
実はこの女学生にはモデルがいまして、花袋は「東京の三十年」の中で、彼女の事を「私のアンナ・マアル」(アンナ・マール)と呼んでいます。

「蒲団」が「新小説」という雑誌に掲載された後、そのアンナ・マアルから花袋宛に手紙が届きました。


 やがて山の中のアンナ・マアルから悲しむような泣きたいような腹立たしいような手紙が来た。
 私は重々すまないやうな気がして、侘びを言ふやうな手紙を書いた。


しかし、このアンナ・マアル、恋人と文学を諦めきれなかったらしく、またすぐ田舎から上京し、度々花袋の元を訪れ、恋人と結婚したり別れたり、雑誌記者になったりと、自由で新しい明治の女性を生きました。

彼女の名前は岡田美知代と言います。
あんな私小説を発表されても、再び花袋に会いに行くとは、なかなか腹が据わった女性ですね。

また「アンナ・マアル」とは、ゲアハルト・ハウプトマン作「寂しき人々」に出てくる女学生の名前で、やはり既婚の小説家が彼女に岡惚れするお話です。
「少女病」という作品を書いた花袋は、若い女性に永遠の幻想と憧れを、魁偉な巨体に秘めていたようです。

花袋の「東京の三十年」は、変動する明治という時代と、文学界の裏話などが生き生きと描かれていて大変興味深い内容です。
親しかった、国木田独歩や柳田国男、島崎藤村、その他、大文豪の裏話もちらほら知ることが出来て面白い。

初版が出たのは大正6年、その後創元社が昭和二十二年に正宗白鳥の後書きを入れて発行。これはいくらか古書で出る事もありますが、岩波から文庫が発売されています。息の長いベストセラーなのかもしれません。








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